■「投げ銭」はいま

松本 功


投げ銭の進展状況が分からないので説明するようにということでメールを頂いた。私もいろいろ輻輳していて、何が何だか分かりにくくなっているなあと思っていたので、いい機会なのでまとめてみることにする。

●お金を送る仕組みはいくつもある

投げ銭はいつ実現するかということをいつも聞かれるのであるが、仕組み的にお金を送ることができるということだけなら、今でもすでにできる状態だ。われわれがやっている投げ銭ホームページではKDDのミリセント(http://www.millicent.gr.jp/)をつかって投げ銭できるようになっている。

ただし、ミリセントの電子財布ソフトはWindows98/NTしかないので、マックの人やUNIXの人は投げ銭することができない。ミリセントの中にも投げ銭とコンセプトが近いものがすでにあり市民オンブズマンの服部さんが、オンブズマン団体にカンパを送ることができるようにしている。( http://ombuds.millicent.gr.jp/

また、ミリセント以外でももんじゃさん(http://www.fsinet.or.jp/~monjya/opinion/01top/top.htm)という方が、プリペイドカードのBitCash(http://www.bitcash.co.jp/)を使って、Donationのサイトを 作っている。

もんじゃさんの方が投げ銭サイトよりもオープンなので、Donationを受けたいのだがと申し出られれば、いっしょにやろうといってくれるかも知れない。また、何かと質問してその返事を返してもらったときに相手にポイントを渡すというのでは、OKWEB( http://www.okweb.ne.jp/)がすでにはじめているし、Oracleがミリセントを使って新しいサイト( http://www.chienowa.com/)をはじめる。これらは、投げ銭的な考えがあるといってもいいだろう。

また、さらにさまざまな方法が、少額決済に使えるようになるということをアナウンスし始めている。SOHOや個人にはかなり敷居の高いクレジットカードからして、ビザやマスターに直に契約というのはなかなか困難だろうが、ビザやマスターも使える都市銀行系の信販会社の中には、積極的に加盟店を開拓するところもでてきたので、以前ほど、敷居が高いということはなくなってきている(あるいはひつじ書房が創業10年を迎えて、信用ができたからだろうか。まさか)。

もちろん、認証のサーバーをどう立てるのかという点があるから、手間とコストを考えるとどこかのモールに入った方がいいかも知れない。楽天市場(http://www.rakuten.co.jp/)が月額50000円とのことであるが、もっと安いところも現れてきている。ただし、扱う商品の数が少ないかも知れない。牛肉やワインを売る場合と違って、テキストや音楽や画像を売りたい場合は、一桁のアイテムしか認めてくれないようではどうしようもないからだ。デジタルコンテンツについてはあまり考えられていないように見受けられる。

クレジットカード会社も軟化しそうだが、他にも新しい動きがある。三菱商事と提携してWisp(http://www.mitsubishi.co.jp/trivnet/)というサービスが、秋から上陸するとのことである。これは決済をプロバイダーの決済機能を使って処理してしまうもので、アメリカではかなりの多くのプロバイダーと契約しており、クリックひとつでお金を送ったり、そうしたお金を受け取ったりできるとのことであった。

説明会にでた印象では、仕組み自体はいいと感じたが、それでも日本の場合は大手のプロバイダーのシェアが大きくて、Wispをつかうよりも、ニフティとBiglobeが提携したりした方が早いかも知れない。プロバイダーが自分の会員向けに、うちなら商売できますよと商売ができることをセールスポイントにすることは十分にあり得ることだと思う。

秋くらいに大手のプロバイダーが、投げ銭を受ける権利付き会員を募集するとかありえるのではないか。これは希望的観測である。無料ホームページの次は、商売可能ホームページということも可能性は十分にあるだろう。どこか、やらないだろうか?

●状況は可能性へ、大きく動き出している

投げ銭システム推進準備委員会も関係しており、7月7日から、Biglobeの中にあるボランティア情報を提供するサイトViva( http://viva.cplaza.ne.jp/)で投げ銭を受けることができるようになる。ゆくゆくはわれわれの投げ銭サイトでもBiglobeを使った投げ銭ができるようになることを交渉している。

Biglobeのサービスは、 Biglobeの会員でなくても、「るんるんコース」というものに登録すれば、クレジットカード決済ができるようになるというもので、投げ銭のクレジットカード代行も同時にはじまると考えてもいいだろう。これも、上記のようなことがなければ、多くの人に投げ銭を受けられる仕組みが公開されるということではない。少しずつ前進しているところである。

さらに、HotWiredの「個人対個人の電子支払いサービスに群がる企業(上)」( http://www.hotwired.co.jp/news/news/20000614105.html )によると市民向けの少額決済の新しいサービスがアメリカでは、はじまるようで、C to Cの決済は向こう側ではもう動いているとのこと。アメリカで起こることは日本にも波及する可能性が高いので、あっけなく実現するかも知れない。でも、やはり、そういう必要があるということを訴えないと、これが上陸しないか、あるいは重要なサービスぬきでやってくる恐れもあるだろう。

さらに、現在、私も関わって計画中だが、「書評」から本を買った場合、その書評に売価の何パーセントかを書き手にバックしようという仕組みを作ろうとしており、投げ銭そのものではないが、評価を生成させるために少額のお金を使うということを可能にしようとしている。これは、できればこの秋にスタートしたいと思っている。

他にはオンラインでの少額決済専用の銀行もできそうである。日本電子決済企画株式会社(http://www.ebank.ne.jp/company.html)というものが、計画されており、これは、決済自体は、携帯電話を使うことが想定されているとのことである。ご存じのように、携帯電話で自動販売機の缶ジュースを買うことなどは技術的には、クリアされているそうで、オンラインのあるコンテンツに携帯電話経由で、少額のお金を送るようにすることも、別段問題はないわけである。

これについては、携帯電話が決済端末になるということに過ぎないので、動き出せば、大きな企業は使い始めるだろう。SOHOやNPO、個人のクリエーターがそのお金の受け渡しの輪の中にはいることが出来るのか、ということは政治的な問題ということになるだろう。

大企業の電子取引については、企業間電子商取引推進機構(http://www.jecals.jipdec.or.jp/index.html)で協議しているが、大企業向けなので会費が高すぎて、会議には参加できない。

このように状況は可能性へ、大きく動き出しているといえるだろう。実際に使えるサービスも出てきた。ただ、ソフトをインストールしなくても(ブラウザーに最初から入っているような形で)、思いついた時に簡単にクリック一つで、相手に感謝や面白かったと表明するための小銭を送るというところまでは、まだ、到達していない。そのためのインターフェースはまだまだ不十分である。

個人的には、現在のブラウザーのインターフェースを抜本的に超えるやりとりの方法が出てきたときに、もっと気軽で、心地よい投げ銭の仕組みができてくるように思っている。この点では、ネットスケープとか、IEとかに要望を出す必要があるだろう。

ネットスケープのリーダーは、言語学者の桃井さんだということなので、直談判をしようかと本気で思っている(私の経営しているひつじ書房は言語学の専門出版社)。これは、夢想的なことかも知れないが、逆Napstarということが、可能ならば、勝手に相手のハードディスクに価値のあるモノを置いて帰ってきてしまうということもできるのではないかと思うがどうだろう。名前はもう考えてある。そのソフトは「笠地蔵」という名前だ。そんなアプリケーションを誰か作ってくれないだろうか。

●3つの運動

投げ銭の運動としては、長期的に、リアルな世界のような簡単なカンパ行為を実現したい、それによって、人と人とのコミュニケーションのあり方も再構築したいと思っているわけだが、これには時間がかかるので、趣旨を現状にあわせて、個別に運動をしていこうかと考えはじめている。

それは、とりあえず3つある。
1、(見た人にとって)良いと思えるコンテンツを(アクセス数以外の評価で)生き延びてもらうこと。
2、寄付金を集めて、SOHOやNPOなどの組織を動かしていくこと。
3、B to C、B to Bにしか目がいっていないマスコミ、ビジネス界に対して、C to C(creator to creator、customor to customor、citizen to citizen)のお金のやりとりの必要性を訴えていくこと。

1については、投げ銭アワードのようなものを作ることが可能かどうか考えている。協賛する企業を集めて、優れたホームページを誉めるわけだ。

2については、先に述べたようにVivaと協力して、まずはNPOに対する支援を可能にできるようにしていく。あるいは、このデジクリが実際にお金をとれるような仕組みを柴田さんと作ってもいいのかも知れない。どこかの団体がひとつでも、オープンでかつお金を受け取れ方法で成功できれば、幻想ではないことがわかるだろう。ゆるやかな会員制というものが可能なのかどうか、実験してみてもいいのかも知れない。

3については、これは連絡会を作った方がいいのかも知れない。小さなもの達のための小さな決済コンソーシアム。略称、CCCC(C to C Coin Consortium)というのはどうだろうか。実際のSOHOやNPOの団体などと組んで、マスコミに訴えたり、シンポジウムを開いたりする。圧力団体として機能させる。

以上は、まだ、私一人で考えている段階に過ぎない。投げ銭という言葉は、なかなか魅力的だと思うが、漠然とした夢のようなところがある。これだと、どこまでが現実で、どこからが夢想なのか、その境界がわからなくなってしまう。むしろ、実現と言うことを考えた場合、夢を見ているばかりではなく、投げ銭のこみ入った要素を分けて、それぞれの願いごとに具体的な目的と実現スケジュールをたてて、一歩一歩進んでいくようにした方がいいかも知れない。

これも実現できた、これも実現できた。これについてはまだまだだとか。細かくゴールを設定した方が、長距離を走るにはいいのかも知れない。その意味では、後ろを振り返ると走り始めたスタートラインがまだ良く見える程度しか、進んでいない。これからである。


松本 功

投げ銭システム推進準備委員会
http://www.nagesen.gr.jp/
ひつじ書房
http://www.hituzi.co.jp/
書評ホームページ
http://www.hituzi.co.jp/hituzi/links-j.html

トップへ戻る